発泡スチロール造形の道具達


材料について

 先ず初めに、発泡スチロールと一口で言っても発砲倍率等の種類があります。

造形用に適しているのは倍率の高い柔らかいタイプがお勧めです。ホームセンタ等で販売している板状の物は発泡倍率が高い柔らかいタイプです。倍率が高いと強度は下がりますが加工がしやすく重量も軽くなります。

(※発砲倍率の低いスチロールは硬く重く丈夫な反面、加工(彫刻や研磨)が大変になります。)

大きさは、1800×900×500ブロック・2000×1000×500ブロックまでの大きさまであります。

それより小さいサイズはニクロム線の熱で切断します。それより大きいサイズは接着します。


ニクロム線による切断・粗切り

 ニクロム線も太さや長さにより使い勝手が違います。

弊社では、電熱器600W用のコイル状ニクロム線を引っ張って伸ばし、使う長さに合わせて使用しています。

ニクロム線の長さにより、変圧器で電圧を調整します。

(※細いニクロム線は、使う頻度により切断中に切れやすいです。)

 


 ニクロム線に電圧を加えていくと、オレンジ色になり高熱になります。色が変わらない程度の熱さでも十分に切断出来ます。

又、ニクロム線に電圧を加えるとニクロム線自体が膨張して長くなります。適度に左右に引っ張るテンションをかけておかないと弛みます。

(画像は、変圧器とニクロム線が張った弓です)

これ以上大きな切断の場合、2人でニクロム線を引っ張り合って使う時もあります。



直線を切断する時は両側面にアルミLアングルを添えたり、曲線はアルミ複合版や薄いベニヤ板を形に切って添えて。

垂直に切断するミシン鋸みたいな道具もあります。

材料は作業場にあった端材で製作しました。

ニクロム線に電流を加えると伸びる為、竹でテンションが加わるようにもしてあります。

 

 


発泡スチロール用ナイフ

 弊社で欠かせない道具の一つ、引廻しのこぎりを改造した発泡スチロール用ナイフです。通常のカッターナイフや鋸で発砲スチロールを切断・彫刻する際に、刃の幅や厚みが抵抗となり力が入り上手く出来ません。

このナイフは細くて長くてしなりのある特徴がとても重要です。

細かい細工はもちろん、直線も曲線もビックリするぐらいきれいに切れます。剃刀ほどの切れ味はありませんが、常に砥石で研ぎながら使用します。切れ味が悪くなるとカット面が崩れたり力がいるようになります。

(果物の飾切りをするカービングナイフも形が似ています。)

 使い方はノコギリの様に前後にスライドさせて切る要領です。

※くれぐれも怪我に注意して作業してください。

 


スチロール用ナイフの作り方、

 引廻し鋸の歯をグラインダーで落とし、歯厚を片面ずつグラインダーで鋭角に削ります。この時、焼けて鋼がなまらない様に水等で冷やしながら気をつけます。焼けると曲がりやすくなり使いにくいです。

(鋼の断面が鋭角なハマグリ型になった方が良いと感じます。)

その後は、砥石で産毛が剃れる様な鋭さに研いでいきます。(爪に当てて引っ掛かるていど)

 (引廻しのこぎりの鋼の良し悪しもあります。張りの有る曲がりにくい鋸を選ぶ事が重要です。)

※くれぐれも 作業は自己責任にてお願いします。



発砲スチロール用ナイフについて、

このナイフの形状は日本古来の直刀と同じです。

そしてこのナイフを使ってみると、どうしてその後の日本刀に反りが入ったのかも想像がつきます。

刀の重みで切る感覚とは違いますが、どうすると切れ味が良くなるのか理屈が同じだと感じます。

この様な形状の刃物は、使い方次第で刃物の印象も変わります。

取扱には十分注意して、大切に扱って下さい。

 


ワイヤーブラシ・ペーパーヤスリ

 ワイヤーブラシは鉄の物を使用します。

この作業を怠ると、ナイフで彫刻したガタガタが残りやすいです。

 ペーパーヤスリは、40~60番位から始めても良いです。静電気でスチロールの粉が体中にくっつきますがしょうがないです。洗濯の柔軟剤を水で希釈し、スプレーしながら作業すると粉離れがよく効率が良いです。

180~240番程度まであてればかなり綺麗な表面になります。

ペーパーヤスリを両面テープ等でスチロールの当板等をくつけると面が出しやすいです。

ペーパーのあて方も、軽く力を添えて大きく動かすと上手くいきます。

造形の細部は、ペーパーの形を工夫したりもします。



着色は水性塗料で!

 画像の『アマビエさん』はホームセンターで購入出来る建築用水性塗料のみで着色してあります。建築用塗料は主に発色が良くない(色のりが良い色しかない)為、綺麗な発色の良い色が塗りたい場合は、耐水性のポスターカラー・ターナネオカラー・イベントカラー・アートカラー等、必要に応じて選択すると良いでしょう。

多くの水性塗料は粘度が高い為に、着色にコツがいりますが慣れればグラデーションも筆や刷毛でおこなえます。

強度に関係なく発泡スチロールの質感や細部まで丁寧な仕上がりにしたい場合は、下地に水性パテ及び研磨でツルツルに仕上げることも可能です。

 耐水性の塗料を塗り重ねれば、屋外でも数年は大丈夫です。塗装被膜で多少の強度は出来ます。(形状や状況での違いはあります)

短期のイベント等の使用で手早く軽く仕上げたいのであれば、水性の缶スプレーも重宝します。

 艶を出したい場合は、水性クリアーを上塗りして仕上げると質感も上がります。


誤解されてる発泡スチロール

 海や川に落ちているゴミの中にも白く目立つ発泡スチロールがあります。

大変燃えやすく、燃えると不完全燃焼による黒い煙もでます。

ゴミになるとか不燃材でないとか・・・ 

 

しかしながら、発砲スチロール(発泡倍率50倍)の体積のうち98%は空気で石油はわずか2%のため、殆んどが空気なのです。材料としてはエコで、発砲スチロール造形とは、限りなくエアー彫刻をしているような事になります。(笑)

 

有害な物質は一切含まれておりません。成分のポリスチレンは炭化水素なので燃やすと炭酸ガスと水になるため人体には無害とも言われています。(ダイオキシンも発生しません)やわらかいため自然界で劣化して分解するスピードも速いです。